古楽夢 ~六拾九~
木曾海道六拾九次之内
守山/広重画
守山宿には町並みと川が直角に交差して流れている所はあるが、この絵のように町並みが川に沿って連なっている所はない。広重は宿場内の有様をもっと明確に示せるようにと、意図的に宿場の東側の町並みのみを川に沿わせて描いたものと思われる。この川は宿場とその南の今宿との間を流れる吉川(境川、守山川)であり、この絵はこの川越しに宿場を望んで描いたものと想像される。この辺りの宿場は茶屋や青楼が櫛比して賑わっていた所である。宿場の背後の緑の山は、富士山に似ていて、近江富士と呼ばれた三上山である。この宿場の周辺に多くあった桜の木が、川縁りでも、宿場の裏の丘陵でも満開の花を咲かせ、宿場を春爛漫の華やかな雰囲気に包んでいる。一番右の家の土間では宿駕籠が待機中である。次の茶屋では床に座った下女が客待ち顔である。丸に林(版元錦樹堂の商標)の看板と柱行燈のある茶屋の前では縁台に腰掛けた旅人が人の往来をぼんやりと眺めている。その隣の茶屋の壁にも版元錦樹堂の別名「伊せ利」の看板が掛けてある。街道を1人の旅人を除けば皆が宿場の中心へ向かって行く。左から、商品を天秤で担いだ行商人、馬子と乗掛け馬に乗った武士、長持を担いだ人足達である。殿は乳呑児を背負った母親とその子供である。
今切関所通行手形の紹介