古楽夢 ~五拾~

木曾海道六拾九次之内
細久手/広重画

 細久手は東から西へ向かって下る坂の両側に形成されていた。この絵は宿場の東の高い所から宿場の入口を望んでいる。街道の両側から中央に向かって傾いた2本の松はあたかも宿場の入口の門の代りをしているようである。宿へ入ろうとしている武士は、一文字笠を被り、長合羽を着、柄袋で柄を覆った刀を担ぎ、それに水を入れた竹筒を吊り下げている。逆に坂を登ってくる管笠の一人旅は、荷物を肩の前後に振り分けている。右の松の木の間を背負子を背負って歩く村人は山へ柴か薪を集めに行くのであろう。その後では手拭を姉さんかぶりにし、右手に管笠、左手に鎌、腰に藁で作った腰当をつけた村の女が、やはり管笠を被り、尻皮を腰に付け、鎌を持った男と向かい合っている。両人ともに山へ下刈に行くにしてはちょっと身形が改まりすぎている。そもそも細久手とは細い窪地を意味し、この宿場は広い田畑に恵まれていなかった。そのため貧しい家が多く、宿場の財政を維持して行くことがなかなか困難であった。これを見た宿場を管理する代官は、農民達に紙の原料となる楮の栽培を奨励した。そのため宿場の周辺の各所に楮の畑があり、農民達は成長した楮を鎌で刈り取った。この男女2人は今から楮を刈りに出掛けるところであろう。


~火縄銃の銃身を切って香立にしたものです~

火縄銃 香立以古砲