古楽夢 ~四拾四~
馬籠驛 峠ヨリ遠望之圖/英泉画
英泉はこの絵の副題を「峠ヨリ遠望之図」としているので、彼の目的は前景に馬籠峠、中景に峠より見下ろした馬籠宿、そして遠景に恵那山を描くつもりであったと思われるが、この絵にはその目的が果たされているとは思えない。そもそも馬籠峠より北方は狭い谷間を通して妻籠から三渡野まで見通すことができて眺望がよかったが、英泉は南の方向を選んだために色々な無理が生じている。まずこの峠から馬籠宿は見えなかった。従ってこの絵の峠下に見える家々は峠村となる。つぎに左の山の崖から2条に分かれて落ちる滝については、英泉は峠より妻籠寄りに下った谷間にあった男滝と女滝とを無視してここまで引き上げて描いている。閑話休題、街道に目を転じてみる。一番手前は空の山駕籠を担いだ駕籠舁である。山駕籠の底は山道のあちこちにぶつからないように円くなっている。その前では相棒が緩んだ草鞋の紐を締め直している。風呂敷包を背負い、道中差を差して峠村を見下ろしているのは小商人であろうか。滝の先の山道を、牛に横乗りになって行くのは牛方である。峠村は牛方が多く住む村であった。彼もそこの住人であろう。牛方達は1人で2~3頭の牛を引き連れ、木曽谷を中心に荷物を運び駄賃を稼いでいた。
突盔形兜のご紹介
鉄地黒漆塗十二間突盔形兜鉢
鉄地黒漆塗十二間突盔形鉢で、天草眉庇に内眉庇を付け、一本角元を打っている。天草眉庇とは、棚眉庇の形式のひとつで防止のつばを波打たせるように作る。
鉄錆地突盔形兜
松平忠明の臣、杉浦八右衛門が大坂夏の陣で討ち取った敵将の兜と伝わる。
黒漆叩塗突盔形兜