古楽夢 ~六~

古楽夢(六)

木曾街道 上尾宿
加茂之社/英泉画

日本橋より36.8km

 大宮と上尾の中間に賀茂村があり、この絵に描かれた賀茂社があった。その昔京都の上賀茂神社を勧請したとも伝えられ、五穀豊穣の神である別雷神(わけいかずちのかみ)が祀ってあった。

今この社の隣の農家の前では一家総出で唐箕を使って籾の精選に大童である。娘が脱穀したばかりで籾殻も混じった

籾を唐箕の上部の漏斗状の口へ流し込んでいる。右方では農婦が精選済の籾を俵に詰めている。俵詰の籾はそのまま年貢として納入された。

旅人や人足が休める立場であったこの村には、立場茶屋が何軒もあった。

農家の隣がその1軒のようで、合羽姿の武士が両掛を担った供を連れて出た後へ、葛籠を背負った修行者が入って行く。


小柄のご紹介

舟乗布袋図小柄 銘  秀現斎弘貞(花押)

朧銀磨地 鋤出高彫 象嵌色絵 裏描掻鑪



従者に棹を持たせ、小舟で水上をいく布袋を彫った図柄の良い小柄。

布袋は筵をひいた小舟の中央で大きな袋に寄り掛かり、従者を励ますように采配をふっている。ふくよかな顔をした布袋は銀色絵、表情豊かに竿をあやつる従者は赤銅色絵、川辺に生えた芦は金色絵、素銅とした杭の上の苔は金象嵌を施した入念作。

江戸後期 保存刀装具鑑定書付